はじめに
当校が作成したオリジナルの評価指標である「7つのQ」を用いた評価指標をもとに、児童の問題点の抽出と、それに対するアプローチを実践した結果、感情面のコントロールが、図れ、他者との円滑な交流が可能となった児童を担当する機会を得た。今回、実践した内容と評価結果をもとに、7つQの有効性を考察し、以下にまとめます
児童紹介
4歳の男子児童。近隣の保育園に在籍。3歳半検診で、言葉の発達の遅れと癇癪などを指摘され、療育を利用する。保育園では、自分の思いを言葉にできずに、すぐに手が出てしまうことが頻繁にある。また道具の共有や、はじめての事柄や場所が苦手であり、不安になると大声をあげたり、ものを壊したりするなどの粗暴行為も頻発しています
問題行動とその原因
児童の問題行動は、以下のような原因によるものと推測されます。
EQの低さ:
感情の理解や表現が困難であり、不安やストレスを適切に処理できないため、癇癪や攻撃性につながる
SQの低さ
社会的なルールや他者の感情を読み取ることが難しく、コミュニケーションの問題に発展しやすい
AQの低さ
新しい環境や変化に対する適応力が不足しており、不安定な行動を引き起こす。
PQの低さ
感覚過敏や感覚処理の問題があり、外部の刺激に過剰反応する。
SQの低さ
想像力や計画性の低さから、問題が生じたさいや新しいことに直面した際に不適切な行動が生じてしまう。
IQの低さ: 認知的な遅れが言葉の発達に影響を与え、コミュニケーションを困難にする。
HQの低さ
他者に思いや感情がうまく伝えられず、幸福感や満足感を感じることが少なく、否定的な感情が強い。
実践したアプローチ
今回、感情面のコントロールと、コミュニケーション能力の向上、問題解決能力の向上を目的にEQと、 SQ、AQの強化を中心に以下のアプローチを実践しました。
- 感情認識トレーニング:EQを高めるために、感情カードを用いて感情を識別し、それに適した反応を学びます
- 社会的スキルのトレーニング: SQを向上させるために、ソーシャルスキルトレーニングやロールプレイや模倣を通じて社会的な相互作用を練習します
- 適応行動のトレーニング: AQを向上させるために、新しい環境や変化に対する適応力を高めるトレーニングや自己管理トレーニングを通じ、具体的な問題に対するステップバイステップの解決策を教えます
結果と考察
これらのアプローチを1年間実践した結果、7つのQの大幅な向上が認められ、児童は感情をコントロールし、他者との交流が改善されました。また、癇癪の頻度が減少し、言葉での表現が増え、道具の共有や新しい環境への適応が見られるようになりました。これらのアプローチは、児童の脳の発達段階と相まって、感情のコントロールと他者との交流の改善に大きな影響を与えたと考えられます。
さらに、今回、EQ、SQ、A Qを中心にアプローチしましたが、他の領域にも著しい向上が認められました。その要因としてこれらのアプローチは相互に関連しており、一つのスキルの向上が他のスキルの向上にも寄与するという相乗効果が期待できるからと考えられました。子どもの脳は非常に柔軟で、新しい経験や学習によって神経回路が形成されやすいです。実践されたアプローチは、この神経可塑性を利用して、児童の脳に新しい行動パターンを定着させた可能性が考えられます。
本実践を通じて、「7つのQ」を用いた評価指標が、児童の感情面のコントロールと他者との交流改善に有効であることが確認されました。今後もこの評価指標を活用し、児童一人ひとりのニーズに合わせた支援を行っていくことが期待されます。