〇 発達性トラウマ障害とは?
・発達性トラウマ障害とは、子どものころに何度もつらい体験をしたことで、
心や体の発達に大きな影響が出る状態のことです。
・たとえば、
①いつも怒鳴られていた
②暴力をふるわれていた
③無視されたり、世話をしてもらえなかった
④安心できる大人がいなかった
こうした体験が小さいころに長く続くと、子どもは「この世界は危ない」
「自分は大切にされない」と思うようになってしまいます。
〇 どんなことが起こるの?
・この障害を持つ人は、大人になってからも次のようなことで困ることがあります。
①感情のコントロールがむずかしい
すぐに怒ったり、逆に何も感じなくなったりします。
②人との関係がうまくいかない
人を信じられなかったり、逆に必要以上に依存してしまうことがあります。
③自分のことが好きになれない
「自分はダメだ」「愛されない」と感じやすくなります。
④体の不調が続く
眠れない、頭が痛い、お腹が痛いなど、体に出ることもあります。
〇 PTSD(心的外傷後ストレス障害)とのちがいは?
・PTSDは、交通事故や災害など「一度の大きなショック」で起こることが多いです。
・それに対して発達性トラウマ障害は、小さいころに繰り返されたつらい体験が原因に
なります。だからこそ、心の土台や人との関わり方にも深く影響してしまうのです。
〇 どうすればよくなるの?
・発達性トラウマ障害は、信頼できる人とつながりながら、自分の心を少しずつ
癒していくことが大切です。
①心理カウンセリングやセラピー(遊びや会話を通して安心感を育てます)
②安心できる場所での生活(予測できる環境)
③自分を責めないこと(トラウマはあなたのせいではありません)
つらい経験があっても、それを乗り越えていくことはできます。
ゆっくりでいいので、「安全」「信頼」「安心」を感じられることが大切です。
家庭でできる発達性トラウマ障害への支援は、とても大切です。専門的な治療とあわせて、安心できる家庭環境が回復の土台になります。
以下に、家庭でできる具体的な支援方法をわかりやすくまとめます。
家庭での支援のポイント
1「安心感」を何より大切にする
発達性トラウマを抱える子は、「この人は自分を傷つけるかもしれない」と無意識に
感じています。だからこそ、「ここは安全だ」と思えることがとても大切です。
具体的には・・・
①怒鳴ったり、威圧したりしない
②スキンシップ(ハグなど)は無理強いしない
③予定やルールはできるだけ予測できる形で伝える
2感情の表現をサポートする
自分の気持ちを言葉で表すのが苦手な子も多いです。感情を「安全に出せる」ように
サポートしましょう。
具体的には・・・
①「悲しかったね」「びっくりしたんだね」と気持ちに名前をつけてあげる
②泣いたり怒ったりしても「気持ちを出しても大丈夫」と伝える
③絵やぬいぐるみ、日記などを使って、間接的に感情を表現できるようにする
3信頼関係を少しずつ築く
すぐに心を開けるわけではありません。時間をかけて「この人は裏切らない」と
感じてもらうことが大切です。
具体的には・・・
①約束を守る(小さなことでも)
②叱るときも、その行動がダメだっただけと伝える(「あなたが悪い」と言わない)
③「あなたのことが大事だよ」と繰り返し伝える(言葉でも態度でも)
4反応に「意味がある」と理解する
困った行動(暴れる、無視する、引きこもるなど)には、その子なりの理由があります。
それは「わざと」ではなく、「守るための反応」であることが多いです。
具体的には・・・
①「この子は今、何を感じているのかな?」と想像してみる
②行動の裏にある不安や恐れに目を向ける
③すぐに正そうとせず、まず安心させることを優先
5支援者(親自身)も助けを受ける
子どもを支えるには、支える側も支えが必要です。親や養育者が疲れ切ってしまわない
よう、自分自身のケアも大切です。
具体的には・・・
①家族や友人に話す
②専門家(カウンセラーや支援機関)に相談する
③完璧を目指さず、「できる範囲で十分」と思うこと
最後に
発達性トラウマを持つ子は、「ふつうの関わり」だけではうまくいかないことがあります。ですが、「安心」「共感」「一貫性のある関わり」を積み重ねていくことで、少しずつ変化していきます。
焦らず、ゆっくり、心をそばに置いてあげてくださいね。